ボーイズラブが前提の長編小説です。主人公は高校生。ある日、不思議な少年に出会ったことから、怪奇な事件に巻き込まれていく。惹かれ合う2人だったが…?!
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プロフィール

あまふりあおの

Author:あまふりあおの
あまふり・あおの

普段は絵描きをしている腐女子な主婦。無事出産で、現在一児の母。
たまりにたまった萌えをはきだすために、BL小説街道爆進中です。
長編ですので、ちょっと読むのは大変とは思うのですが、感想等いただけると非常にうれしいです。
もともと絵描きだから、たまには絵もアップ♪




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Welcome to 雨振舘 !!
お話のタイトルは「DARK HALF」です。中学生でも読んでも大丈夫!ですが、ちょこっとそういう描写もありますので注意です!(指定するほどじゃないので…)
管理人の日記はリンクから”雨振舘つれづれ日記”へどうぞ。お話についてもつぶやいてます。
拍手、コメント、メール大歓迎です!感想ぜひぜひクダサイ!
著作権放棄してないですよ。無断使用、転載等やめてくださいね。

☆管理人とはこんな奴
☆日記はこちら
☆登場人物紹介へ
☆あらすじへ


〜アンケートご協力ありがとうございました!結果発表をお楽しみにvv〜 ☆☆こんなのあったので作成してみました。はじめからこういうアンケート作成してればよかったかも…。
人物アンケート気が向いたらやってみてください…。
DARK HALF第2話 
2007/05/22 /23:19
次の日は快晴だった。

 久坂は昨日の出来事が嘘のように普通に登校している自分が不思議だった。そして、もっと理解しがたい事実がひとつ…。
 横には、並んで高杉が歩いている。
 それにはこんないきさつがあった。

 昨晩、何かわからない怪物に襲われ、高杉に助けられた後、自分は重い足をひきずって自宅に帰った。制服はあちらこちら泥だらけで、擦り傷と、あの怪物につけられた切り傷。一体どういいわけしていいかわからず、出迎えた母に、結局は高杉の言ったように、
 はでに転んじゃって。
 とだけ告げた。
 恐ろしいのは、その後、あっさり母が納得したことだった。誠ったらいくつになってもうっかりさんねーとかいって深く追求してこない母に、逆に驚きを隠せない。
 
 だって、普通転んでここまでならないだろっ!!
 
呆然と玄関に立ちつくしていると、早く風呂に入って、着替えなさい、と普通に怒られた。しょうがないので、風呂に入ると、怪物に切られた傷跡がひりひりとしみて痛い。あれが現実だったんだ、ということを思い出させられた。
シャツの袖口に血が付いていたので、さすがにそこは風呂に入る時に自分で手洗いをする。
 多分、自分の血ではなく、高杉の血だった。
 自分たちと変わらない、血の色と、血のにおい。でも、彼は人間ではないとはっきり言っていた。そして、久坂を守る、と言っていた。本当だろうか。詳しいことが聞けなかったから、想像が想像をよんで頭が混乱してくる。久坂はのぼせるほど湯船につかって考えていた。
 晩ご飯もそこそこに、自分の部屋へとあがる。どっと疲れがわいてきて、ベットに倒れ込んだ。
 あれはまだ生きているらしい。
 こうしている間も、襲ってくるかも。
 今晩中は大丈夫だと高杉は言っていたが、信じられるのか。それに、高杉のあの怪我は治るのか、あの怪物はあの雑木林以外にもあらわれるのか…
 …と、そこまで考えが至ったとき、ひとつのことを思い出して飛び起きた。


 俺の、鞄!!


 あのとき、いきなり襲われて、たぶん、まだあの雑木林の中だ。
 どうしよう…
 解っていることは、いまから取りに行くなんて無理、ということ。
 あの鞄がないと、現実的に明日困るということ。
 どうしよう…
 再び、考え込む。

 と。そのとき、頬に風を感じて、何気なくベランダの方をみた。少し窓があいている。
 開けた覚えはないのに?
 怪訝に思って近づくと、ベランダに、雑木林に置き忘れたはずの、久坂の鞄が立てかけてあった。
 驚いて、窓をあけて辺りをみまわす。それらしき影はなかったが、たぶん、こんなことをするのは…。
久坂は夜空を見上げ、それから部屋へと戻り、窓を閉めた。
 眠れなかったが、朝になって学校にいったら、高杉に聞こう、と思っていた。

 そして、朝である。いつもの時間に家をでて、いくぶんか重い足取りで交差点の角をまがると、そこに、今の今考えていた人物が立っていた。
「おはよ」
 普通に、声をかけてくる。
 久坂は驚きで口をぱくぱくさせて、言葉が出てこない。
「昨日、ちゃんと眠れたか?心配だからこれからもお前を送り迎えすることにしたから」
「は…はぁ?!」
 高杉はにっと笑って歩き出す。立ちつくしてるわけにもいかなかったので、久坂も後を追って歩き出した。

 2人が一緒に登校しているにはそんな、いきさつがあった。

少し自分より背の高い高杉を見上げてみると、彼が昨日言ったとおり、傷は治っているように思えた。戦いの名残を感じさせるものは何もない。
 やはり、人間とは違うのだな、と思ってみる。だが、あの昨日の何か、と同じとは信じられない。
 自分を守る、と言っていた高杉の言葉を素直に信じるほど信頼しているわけでもなかったが、その言葉を疑うような雰囲気をやはり高杉からは感じられないのだった。
 久坂は思い切って話しかけてみる。
「なぁ…。鞄…。届けてくれたの、お前…?」
「うん。ないとこまるし、お前取りに行く度胸ないだろ」
「なー!!」
 図星なことを言われて真っ赤になる。そんな久坂を無視して高杉は真面目な顔で続けた。
「それに、取りに行くって言っても俺は許さなかった。少しでも危険だと思うことはなるべくお前にはさせない」
「…………」
 そんなに真面目にいわれて、返す言葉がなかった。
「今日…ちゃんと、その訳、説明してくれないか」
 やっと、言葉に出せた。
「わかってる。昼休みにでも。どこか、人のいないところで」
「うん…」
 学校に着くと、いつもの日常が待っていた。

 
 
 授業がはじまっても、久坂は落ち着かなかった。本当は授業なんか受けている状態じゃない。高杉は昼休みに、といっていたが、今すぐにでもこれまでのこととか、高杉のこととか、自分自身のこととか説明して欲しくてたまらなかった。昼休みまであと一時間。時計を眺めながらいらいらする。授業の内容はこれっぽっちも頭の中に入らなかった。

「…で、ここが重要なところだからな、中間にだすから、絶対にノートとっておけよ」
 
 教師の声にはっと我にかえり、あわててノートをとろうと、机の上のシャーペンをとった。あわてたせいで、手が筆入れにあたり、がしゃん、と音を立てて床に落ちる。
「あ、すいません…」
 教師にあやまって落ちた中身を拾おうと、床に手をつけたその時だった。

 ざわざわと身がそそけだつような気配が手からのぼってくる。全身に伝わって、ぶるりと身震いした。
 これと同じ感覚を、ごく最近味わった。
 
 昨日、雑木林で。
 
 そこで、思考が恐怖に支配されて身体が動かなくなる。
 冷や汗が、出てきた。
 授業中なのは、わかっていたが、このことを唯一伝えられる人物に向かって、声をしぼりだした。

「た、高杉…っ!」

 その声と同時に、なにか鋭い刃物のような感覚が空間一体をはしった。まるで、教室全体が水の中につかっているように、揺らいでいる。そして、同時に久坂を支配していた気配がきえる。金縛りをとかれたように、久坂が自分のいすにすがりつくように倒れ込んだ。
「久坂…っ!」
 その久坂を高杉が抱き起こす。
 がくがくとまだ震える身体を、高杉の助けを借りてなんとか起こした。
「こ…これは…?」
「お前が感じた通り、昨日のやつがお前を追ってここまできたんだよ。いま一時的に結界をはってはじき返したから、今のうちにここから出るぞ」
「あ…でも、みんなは?」
「結界をはったときに動きはとめてるが、死んでるわけじゃない。ほっといてもいい」
「ほっといてもいいって…」
「とにかく、場所を移動する」
 2人はとりあえず屋上へ向かった。
 階段をかけのぼって、久坂は息があがる。一方高杉は息すらみだれてない。
 こういった出来事も、めずらしいことではないらしい。
 久坂をかばうようにしながら、戦闘態勢をとっている。
 自分はどうしたらいいかわからなくて、とにかくあがった息を整えようと努力した。
「来た」
 高杉が短く告げる。
「え…」
 どこから、とかそういったことを聞く暇もなく、昨日のあの、見えない何かが、自分のすぐ左を襲ってきた気配を感じた。
 思わず目をつむって身体を固くすると、襲ってきたそれを高杉がなぎ払ったのがわかった。すぐに久坂を抱えて場所を移動する。移動した場所に執拗におってくる何かが、屋上の床をたたきつけ、へこんだ跡をつけていく。その振動にさすがに校舎が揺れた。
「っ…しつこいな、こいつ…。マジで、校舎壊れるかも…」
 物騒なことを高杉が言う。
「よ、よくわかんないけど、それはまずいんじゃないか?!」
 パニックする頭で久坂が叫ぶ。状況からすると、命の危機にさらされてるわけで、校舎のこと気にしてる場合でもないような気もするのだが。
「それを気にすると、俺も戦えないからな…。場所を間違えたな。校庭に移動するぞ」
「い、移動って?」
 久坂の肩をつかんで、手短に高杉が指示をだした。
「俺が一瞬あいつの気をそらすから、お前、先に下に降りてろ」
「降りるって…階段で?」
 今いる場所は階段から離れていて、自分の足ではたぶんすぐに追いつかれてしまうのではないかと久坂は思った。
「だれがそんな悠長なことしろっていったんだよ、頭わるいな!」
 高杉が怒鳴りながら、久坂を抱えて屋上の手すりの上に器用に降り立つ。
 頭悪い、といわれたのは腹が立つが、実際にその行動は理解できなかった。階段でおりずに、校庭にどうやって…?
 たぶん、あの何か、のいる方向を高杉がひとにらみすると、顔を久坂の間近に近づけた。
「いいか、ちょっと怖いかもしれないけど、すぐにうけとめるから、がまんしろ」
「は?」
 やはりまだ事態がのみこめない久坂に、高杉がすばやくキスをした。
 驚いて目を見開いた久坂を、校庭の方へ文字通り放り投げると、同時に襲ってくる敵に向かって叫ぶ。

「爆砕!!」

 昨日よりは小規模の爆発が屋上で起こった。
 久坂はそれを、校庭に落下しながら聞いていた。

 あまりのことに、頭は真っ白だった。自分の身体が宙に浮いた、と思ったら、ものすごい力で地面にひっぱられるように落下する。頭の中で、飛び降り自殺する人はその途中でたいがい気絶している、という話をなぜか思い出していた。

 死ぬ、だろう。これは、間違いなく。

 声もでなかった。どちらが上でどちらが下なのかわからないなか、地面が近くなったことを感覚的に知る。その瞬間、腕を強い力でひっぱられ、そのまま抱き込まれる。同時に、かなりの衝撃と共に地面に着いた。
 着いた、というのが、言いあらわせる中でぴったりする表現だった。久坂が着地したのではなくて、さっき自分で言った通り、高杉が、久坂をうけとめ、着地している。ぎりぎりの救出だったとみえて、高杉の足も地面にめりこんでいる。かろうじて久坂の身体は地面についてない、という程度だった。
 
 ともかく、死ななかったらしい。
 
 でも、間違いなく臨死体験をさせられた久坂は、やっと真っ白だった頭の中がカラーになっていくように意識を取り戻した。
「大丈夫か?」
 高杉が一応心配そうにのぞきこむ。
 さすがに、そのめちゃくちゃさに腹がたった。
「だ、大丈夫か、じゃ、ないだろ!!な、なんてことするんだっっ!!放り投げるなんて…っ!し、信じられないっっ!!馬鹿!鬼畜!!鬼!悪魔!!」
 抱えられている格好のまま、腕をふりまわしてあばれた。
「ちょ…っ、あばれるなっ落ち付けってば、ちゃんと助けただろうがっ!」
「そういう問題じゃないっ何があぶないことはさせないだっ!この嘘つき!!」
 気が収まらなくてなおも暴れる。ふりまわす拳が高杉にヒットした。
「…いてっ、わ、悪かったから、ごめん。とにかく、落ち着けって」
「落ち着いてられるかーっっ!!」
 昨日からの恐怖や、混乱や、この理不尽な出来事の連続で久坂も耐えられなくなっているらしい。涙もでてきた。感情がたかぶって、しゃくりあげる。
「な、泣くなよ…」
 なおもしゃくりあげる久坂をどうしていいかわからずに高杉がうろたえる。
とりあえず、久坂を抱えたまま地面から足をひきぬくと、平らな地面に移動し、なおも泣いている久坂を抱きしめた。
「ごめんって…。加減、その、わからなくて、ごめんな、ごめん…」
 必死になってあやまっている高杉に、久坂も次第に落ち着いてくる。落ち着いて、あらためて今の体勢に気がつく。昨日からなんとなく感じていたけど、これって、どうも、その、接触が多すぎるし、さっき、屋上でされたのはたしか…キス…。
「わ…うわぁっ」
 真っ赤になって高杉から離れた。
「っ!!久坂、むやみに離れるなっ!」
「でも…だって、お前、何考えて…」
 久坂がまた二、三歩高杉から離れた。
「馬鹿っ!!」
 高杉が、久坂をさらうように横抱きにして、左へ飛んだ。そこへあの、何かが勢いよく振り下ろされる音がする。
 ばしっと、何かにあたった音が響いた。同時に2人で地面に転がる。地面にたたきつけられるときにとっさに高杉がクッションがわりになってくれたおかげで、久坂は軽く地面で身体を打つ程度だったが、高杉はすぐに起きあがらない。
 よくみると、腕がざっくりと切られている。深く切られたようで、血があふれていた。
「た、高杉っ」
「動くなッ!」
 かけよろうとする久坂を制して、高杉が腕からしたたる血をもう片方の手ですくいとった。それを上にかざして、小さく何かをつぶやく、そして、その手を振り下ろした。
「爆砕っ!」
 かなりの爆音と衝撃が辺りを走る。久坂はとっさに身を伏せた。あの、地をはうような不快な吠え声が響き渡る。ダメージを与えてるらしい。気配が薄くなったことからも、かなりの致命傷を与えたのかもしれなかった。
 土煙がおさまって、あらためて高杉に近づく。
 高杉は、その場に片膝をついたまま動かない。
「だ、大丈夫か?!」
 心配になってかけよって高杉の状態をたしかめる。腕の傷はともかくとして、高杉が苦しそうに両目を閉じていた。右目の上を、何か液体のようなものが流れている。
「高杉ッどこか…どこか、やられたのか?!」
 久坂の心配をよそに、高杉は久坂のほうを振り返る。
「久坂、あのやろう、いまどこにいるか、わかるかっ?!」
「え…む、無理だよ、気配が薄くなったのはわかるけど、どこにいるかまでは…」
 久坂も必死になって辺りを見回すが、わからない。
「お前、やっぱり不完全すぎる」
 高杉が久坂に苦しそうな表情の下から声をかける。
「妖力はぜんぜんないけど、これだけ近いモノもってるのに、なんか、欠けてるんだな…」
「そ、そんなこと言われたって…」
 久坂がとりあえず自分のハンカチを出して、顔の血のりや、液体のようなものをふきとる。それで少し高杉も目が開けやすくなったらしい。自分の顔をぬぐう久坂の手を掴むと、何かを決心するようにじっと久坂をみつめた。
「お前、あの小瓶、いま持ってるか」
「う、うん。内ポケットにいれてるから…」
 久坂が小瓶の所在を自分の手で確認しながら答えると、高杉は小さくよしっと、つぶやいた。
「一か八かだ。お前、それ、喰え」
「……は…?」
 意味がわからなくて固まる。喰えって、食べろって意味だよな、あの、炎みたいなモノを、食べろという意味…。
 目を見開いて固まっている久坂に高杉が続けて告げる。
「それは、お前が今の人間のお前に転生する前に残した最後の力の切れ端だ。だから、お前自身と一緒なんだよ。だから、それを同化させれば、不完全な部分が補えるかもしれない」
「かもしれないって…。俺、お前達と違うんだから、そんなの…っ!」
「いまは違うかもしれないけど、前は同じだったんだよっ!つべこべいわないで、喰えッ!!時間がないんだから!」
 高杉が小瓶をとりあげるとふたをあける。それを無理矢理久坂の口に押し当てた。
「うっ…ぐッ」
 こんなこと無理だ、と思ったその瞬間、おどろくほど自然にその青白い炎が自分の口の中へ入っていって、そこではじけるように消えた。
「……は、あ…、た、食べた…のか?」
 息をついて、高杉に尋ねた。その高杉の肩越しに、いままで見えなかったあの何か、が見えた。巨大な木の根だった。高杉の一撃をうけてぼろぼろになったそれが、校庭に植えてある樹木に触手のようなものをのばし、同化しようとしているのがわかった。

木の、化け物だったのか

雑木林の中で襲われたことに納得がいった。
「た、高杉、後ろで、あいつが木に同化しようとしてるっ!!」
 久坂の声をうけて高杉が振り向きざまに光弾のようなものを放って、弱々しく動く木の化け物に一撃をくらわす。吠え声を上げながら化け物がのたうち、しかししっかりと触手を樹木に巻き付けた。

ーーーーーーそこの、うまい血、よこせ…

 触手が伸びてくる。
「高杉ッ来るっ」
 久坂の声で高杉が今度は久坂を抱いて離れた場所まで跳躍した。先ほどから、どうも高杉の動きが鈍い。いくら自分が見えるようになったからといって、これまではそんなことなかったのに。
「高杉お前…大丈夫なのか?!」
 久坂が高杉をのぞき込むと、やはり右目があけられないまま悔しそうに木の化け物をにらんでいる。
「………下等なあやかしのくせに…」
 ぼそりとつぶやいた。
「下郎のくせに、この、俺に、封じの術をかけやがって…ッ。ってか、こんな下等なやつの術をかわせずに受けてしまうなんてッ…!!」
 よほどくやしいらしく、歯をぎりぎりとくいしばって、拳をにぎりしめている。
「えっ、お前、何か術かけられたのか?!だから、あいつの気配を感じられないのか?!」
 久坂が驚いて高杉に向かって叫ぶ。
 だから、自分に見えるようになれ、といったのか。成功したからよかったけど、だめだったら、共倒れになっていたのかも…。ぞっとする。
「久坂…」
 高杉が久坂を呼び寄せる。
「なに?」
 久坂が身を乗り出した。
「あと一撃でしとめるから。あいつが木と同化して、こっちにむかってきたら、なるべく正確な位置を教えてくれ」
「う…うん。や、やってみる」
 ともかく、うなづいた。
 いままでうなだれていた高杉の身体が小刻みに震えている。拳を強くにぎりしめたまま、ゆらりと立ち上がった。悔しそうにゆがんでいた顔が、怒りの表情に変わっていた。
 あの化け物が、新たに力を得たらしく、一段と巨大化して、久坂をにらんだ。目が見えたわけではないが、自分の前に立ちはだかる高杉より、自分をみたのだと、直感的に感じた。

 ーーーーーーそこか…

 巨体が動く。
 その身体から、無数の触手が一斉に久坂をめがけて襲ってきた。久坂が意を決して、高杉の後ろから一歩左に出た。思った通り、触手と巨体は、方向を久坂に向けて思い切り変える。自分に向かってそれがのびてくるのを確信したと同時に、高杉に向かって叫んだ。
「高杉、左斜め前だッ俺の正面っっ」
 即座に高杉が両手を巨体にむける。そして叫んだ
「このっ…下等根っこ野郎っっ!!許さんっ!!腐るまで水につけてやる!ぶっ殺す!!…爆砕っ!!」
 同時に、今までの中でも一番大きな爆発がおこった。炎ではなく、蒸気のような、熱い空気が辺り一体に充満する。
「く…っ」
 久坂も高杉の後ろで立っているのが精一杯だった。
 化け物の断末魔が響き渡る。そして、今度こそ、その気配は消えていった。
 後にのこったのは、ぐずぐずにとかされたようになった樹木のかけらだけだった。


しばらくして落ち着いてから、高杉が教室で持参しているらしいミネラルウォーターで、ざばざばと右目をあらう。ぶるぶると乱暴に頭を振って、水滴をとばすと、久坂が手渡したタオルで顔をぬぐった。
「くそー…。気色悪かった」
 高杉がつぶやいた。
 そのつぶやきを聞いて、久坂は、あ、やっぱりああいうのは気色悪いって思うんだ。とか、妙に納得していた。人間と違うっていうから、感覚とか違うんだろうと思い始めていたので、そこが共通していたのがなんだかほっとした。
 多少壁にひびは入っているみたいだが、校舎は無事だった。破壊しなかったことにほっとする。冷静に考えてみると、そんなことになったら、ここにいる生徒や教師達も巻き込まれるわけで、そんなのは耐えられない。
 そして、高杉がそれを極力さけるために結界を張ったことも知った。
 あの化け物と同じだっていっていたけど、ちゃんと人間のことも考えてくれていることがわかって、またほっとする。
 2人の間にしばらく沈黙が流れた。
 高杉が口を開く。
「心配しなくても、俺がこの結界といたら、またみんな動き出すから。別に、俺こいつらも巻き添えにしたいとか、死んでもいいとか、そう思ってるんじゃないし」
「うん…それはわかった。ありがとう」
 久坂が高杉に微笑みかける。
 高杉が一瞬瞳をくもらせて、口を開いた。
「でも…」
「でも?」
 高杉の瞳は切なげに久坂を見つめる。
 その瞳にどきりとした。
「そんな余裕もないくらい、お前が危ないときは、周りになんてかまってやれないかもしれない。…そうならないように、俺ももっと強くなるようにがんばるけど」
「高杉…」
 久坂は、大きく息をすった。ゆっくりとはき出す。
 教室はまだ結界が張られたままで、水の中のようにゆらめいている。動いているのは高杉と久坂の2人だけで、空気は冷たく静まりかえっていた。
「どうして、そんなに俺を守ろうとするのか、お前は何なのか、そして、俺はなんなのか…。そろそろちゃんと、教えてくれ」
 高杉の瞳をしっかりと見つめて告げた。
 高杉もしばらく黙って考えている風だったが、決意したように話し始めた。
「俺は、…というか、さっきの根っこ野郎も含めてなんだけど…。人間じゃない。いわゆる人間界に存在する人間外の生き物だ。その中で、人間と共存して、ひっそりと暮らしていっている俺たちを…仮に妖(よう)って言ってる。誰が言い出したのかは知らないけど。そして、それとは反対に…そんなに頻繁じゃないけど、人を襲って秩序を乱す輩もいる。それこそ、根っこ野郎みたいなのから、頭のいい小ずるい奴までいろいろいるけど…そいつらを総称して、“あやかし”って言ってる」
「あやかし…」
「俺たちは普段は里に出てこないように暮らすか、または人間と協力関係を築いて暮らしてる。人間とほぼ同化して、地位を築いてる奴もいるし…。人間が嫌いで、めったに世にでてこないような奴もいる。そして、もしあやかしが人間界を乱したら、それを阻止するために動いてる。いつもそんなボランティアみたいなことやってるわけじゃないけど」
「あやかしの行動を放っておく人もいるってこと?」
 思わず人と言ってから、人じゃないのか、と久坂は頭の中で訂正した。
「まぁ…程度によるんだろうけど…。俺の周りにいる奴らはとりあえず自分たちの行動範囲内でそういうことがあったときは黙っちゃいないタイプが多いからな…」
「だから、俺を助けたの?」
 今回のようなことは、その行動範囲内の一環なのかな、と思って聞いてみる。
何気ない問いかけだったのだが、高杉がするどく否定した。
「違う!俺は、お前だから守るんだよ。俺は、お前しか守らない」
 高杉が、久坂の手を強く握った。
「ずっと、お前を捜していたんだよ。捜して、捜して…気が遠くなるような時間、人間界を捜し回ったんだ。お前の無事だけ、それだけ信じて。そして、見つけた。だから、今度はもう絶対にそばを離れない。誰にも手出しさせない」
「………高杉…」
 燃えるような高杉の視線から目をそらして、久坂がつぶやいた。
「俺は、何…?」
「お前は…。人間、だよ」
「でも、それだけじゃないんだろ?さっき…もともとはお前達と同じだったって…お前、言ってた」
 久坂がうつむく。
「…お前は…。俺たち妖の中でも強力な力を持っていた大妖のひとり…“クサカ”の転生した、人間だよ」
「ど、どうしてそんなことに…」
「詳しいことは俺もまだ把握できてないんだけど、クサカはある日、突然その存在を消した。さっきお前が喰った…あの、カケラだけ残して。あのカケラが存在しているかぎり、クサカは死んじゃいないって俺は思って…。クサカの存在を捜して回ってた」
「それが、どうして俺なんだよ。俺、何も知らないし、覚えもないし、そんな力もないのに」
 高杉が、握っていた久坂の手にさらに自分の手を重ねた。
「全部、封印されてるらしいって、桂が言ってた」
「桂って…?」
「俺の仲間ってところかな」
 強力な力をもった大妖のひとりだ、と付け加えた。
「お前が妖力もなにもない、人間に転生したのは、きっと何か訳が有るんだと思う。だから、むやみに過去を思い出せ、とか、妖にもどそうとか、そういうことはしない」
「俺は…俺はどうすればいい?」
 今度は顔をあげて、高杉を見つめて聞いた。
 高杉が少し困ったように笑った。
「さあな…。とりあえず、普通に生活すればいいんじゃないかな」
「そんなこと言われても…」
 ああ、そうだな、と高杉が思い出したようにつぶやいた。
「さっき、あれ、喰わしちゃったからな…。たぶん、あやかしとか襲ってきたら、今度はちゃんと見えると思う。普通にっていっても、無理かもな…」
「ま、またあんなの来るのか?!」
 これで終わったと思っていたから、驚いて聞き返す。
「たぶんな…。なんか、あやかし達の動向がおかしいって情報が入ってる。さっきの奴も偶然なんだろうけど…。普通の人間とちょっと違うお前に気づいて、お前だけに標的を定めてきてた。それまでは無差別だったからな」
「も、もしかして最近起こってた連続殺人って…」
 うん、と高杉がうなづく。
 これからもそんなことが起こるのかと思うとぞっとした。しかも、今度は自分だけは他の人間と違ってそれが見える、しかも、狙われるかもしれない。ただごとではない。
「大丈夫。俺、お前を守るって言っただろ。だから、お前が普通に暮らしていけるように守る。あれを喰わせて、力を融合させたの、無駄じゃないんだぞ。もう、小瓶にいれて持ち歩かなくても、お前の気配は俺は離れていてもある程度なら、正確に感知できるから。何かあったらすぐ助けに行くから」
 そういって、久坂を安心させるように笑う。
 そんな高杉をみながら、久坂は、肝心なことを答えてもらってないことに気がついた。
「ちゃんと理解できたとはまだ思えないけど…。概略は、わかった。でも、ひとつだけわからない」
「何が?」
「どうしてお前がそこまでして俺を守るのかってこと…」
「お前がクサカだからだよ」
 高杉が即答する。
「でも、何も覚えてないし、力ないし、その…前のクサカとは全然違うんだろ?それなのに?」
「同じだよ。クサカはクサカ。変わらない。確かに力とか、いろいろと違うところはあるけど、でも、お前はクサカなんだよ。俺にはわかる。だから、同じことなんだ。どう変わったって、関係ないんだ」
 高杉が、屈託ない笑顔で笑った。
 その笑顔の裏に、クサカへの愛情を、そのようなものを、久坂は感じた。
「答えになってないよ。俺がききたいのは、どうしてそこまでクサカを守るのかってこと…」
「それは…」
 答えようとした高杉が、ふいに何かの気配を感じたように表情を険しくした。
握っていた久坂の手を離して、立ち上がる。目を閉じて、その気配をさぐってるようだった。
「高杉…?」
 久坂も立ち上がって、高杉に近寄る。
「根っこ野郎、意外としぶとい」
「えっ?!」
 びくり、と身体が震えた。まさか、また襲ってくるのか。
 そんな久坂に気づいて、高杉が大丈夫、と久坂の頭をなでた。
「あの野郎、いろんな所に自分の核を植え付けて、増殖しようとしていたらしいな。町のあちこちに、奴の残留妖力を感じる。ほっといてもいいことないから、全部つぶしていく」
「襲ったりとか…してこない?」
 高杉はもう一度久坂に大丈夫、と言って微笑んだ。
「先延ばしにしてもしょうがないから、俺今からつぶしてくるわ。だから、話の続きはまた今度な」
 そういって、結界を解こうとする高杉に、久坂があわてて聞いた。
「待って…!今度って、いつだよ!」
 高杉がちょっと思案する顔をした。
「わかった。いまから全力で奴をかたづけて、夜、お前の部屋に行く」
「お、俺の部屋…?な、何時くらいに…?」
 高杉が今度は困ったように考え込んだ。
「それは…ちょっと約束できないかも。奴を根絶やしにしないと俺、気がすまないし。またお前をおびえさせるの嫌だしな。だから、全部片づけてからいくから。遅くなっても、必ず行く」
「でも…」
 いいかけた久坂の声には答えずに、高杉が一瞬で結界を解いた。水がはじけたように、世界が元にもどる。
 気がつくと、久坂は床に落ちたペンや消しゴムをひろっていた。
 顔を上げた先にみた高杉の席には、誰も座っていなかった。



その夜、久坂は家にもどると、早々に夕飯と風呂をすませ、自室にこもった。ベランダの窓の鍵をあけて、ただ、高杉を待った。

 本当に、来るのかな…

 夜が更けて行くにつれて、不安になる。
 今日教室で聞いた話を反芻する。信じられない話だけど、信じないわけにはいかない話だった。現に、自分はあやかしに襲われ、高杉はそれを倒して、自分を守ってくれた。なんだかんだと乱暴なこともされたが、結果的にはいつも守ってくれていた。それは、嘘でないことは高杉をみていてわかる。
 
 信じるしか、いまは仕方ないもんな…

 ため息をついた。
 そして、今思考がパニックになってないことに気がついた。不思議と、落ち着いている。こんな出来事に出会ってからずっと胸の奥にあったアンバランスな部分がやっと釣り合いがとれたような、そんな感じだった。もしかしたら、それが今日高杉がいった「不完全」なことで、あの元は自分のちからだったという炎を食べたから、均衡がとれた、ということかもしれなかった。

 過去を思い出さなくていいって言っていたけど、本当にそうなんだろうか?
 普通は、思い出して元に戻って欲しいと思うものじゃないんだろうか?

 そんな疑問もわいてくる。それはどういうことなんだろう。たとえ思い出せなくても、そこまで聞くと、やっぱり自分の過去は気になる。
 特に、高杉との関係が、すごく、気になる。
 高杉と出会ってからの、高杉からの接触が、どうも、昔の知り合い、とか、例えば仲のいい友人とか、そういったものと違っているような気がしてならない。
 思い出して、久坂はすこし頬を赤らめた。
 しかし、すぐに頭をぶんぶんとふって、ついでに両方の手で自分の頬をたたく。なんだか、あらぬ方向へ考えが行きかけて、その考えにブレーキをかけた。
 人間じゃないんだから、妖同士の関係も、人間の範疇をこえてるものかもしれない。
 とりあえずそう思うことにした。
 あとは、本人に聞いてみればいい。
 納得できるかどうかは別にして。

 …と、そんなことを考えていると、ベランダの窓をコツコツと叩く音がした。
「高杉!」
 いそいで窓に駆け寄る。窓をあけると、倒れるように高杉が部屋に転がり込んできた。
「うわっ…だ、大丈夫か?」
「あー…ごめん、えっと、靴ぬがないとな…」
 なんか、妙に現実的なことをいいながらだるそうに履いていた靴を両方ぬぐと、ぽいぽいとベランダに投げた。そして小さく、おじゃまします…とつぶやいた。
 場違いな礼儀正しさに、おもわず笑いがこぼれる。

 変な奴。

「ずいぶん疲れてるみたいだけど…えっと…何か、飲み物もってこようか?」
「ありがたい…水を…水道水じゃないやつ…お願いします…」
 眠そうな声で変な答え方をしている。
 ミネラルウォーターたしか冷蔵庫にあったよな、と頭の中で考えて、久坂が立ち上がった。
「じゃ、もってくるから、ちょっと休んでろよ」
「う…たの…む…」
 本当に、眠そうだった。
両親を起こさないようにそっと台所にいくと、冷蔵庫から水のペットボトルをとりだした。また音を立てないように気を遣いながら階段をのぼっていく。ゆっくりと自分の部屋のドアを開けた。
「ほら、水、もってきたよ」
 さっき部屋から出るときと同じ体勢で倒れ込んでる高杉の横に膝をついて揺すってみる。
 ゆっくりと高杉が目をあけて、身体を起こした。久坂からペットボトルを受け取ると、ごくごくと一気に流し込む。そして大きく息をついた。
「大丈夫?」
「ありがと…落ち着いた。でも、できればこのスーパーで安く売ってるあやしい水じゃなくて、なんとかの名水とか…もっと値段が高くて、ちゃんとした水だったらもとよかったのに…」
「悪かったな、安くて!」
 むっとして言い返す。そんな久坂にお構いなく、高杉が久坂の胸に倒れ込んできた。
「あ…おい、大丈夫か?俺が無理させた?」
 おろおろして久坂が問いかける。
「いや、ちょっと…根っこ野郎退治にムキになったりしたし、想像以上に範囲広くて…。単純に、疲れた」
 そういって、ますますがっくりと久坂の胸に顔をうずめる。
 久坂はそんな高杉をどうしていいかわからずにでもとりあえず両手を高杉の背中にまわして受け止めた。
「でも…ちゃんと退治したからな、もう、あいつは襲ってきたりしないから。安心して、寝ていいぞ…」
 ほとんど自分が寝かけている状態なのに、そんなことをいってくる。
 ちょっとだけど、そんな高杉がかわいいな、と思えた。
「あの…。昼間の、質問の続き…なんだけど」
「あー…そのために俺、きたんだったな…。でも、眠いから、詳しい話はかんべん、な」
「え…うん…」
「俺がお前を守るのは…クサカを守るのは…。俺はクサカのもので、クサカは俺のものだからだよ」
「え…?どういう意味…?」
「それ以上いいようがないだろう。そのままだよ」
「それじゃ、わからないよ」
「……これ以上言わない。やっぱ頭悪いな、お前…」
「また!また、それを言う!」
 はぐらかされた気がして、自分にもたれかかる高杉をひきはがそうとした。
それを、高杉がしがみつくようにして制止する。
「いいから…今日はお前のそばで眠らせてくれよ」
「は?」
「嫌だったら…ベランダ放り出しててもいいから…でも、とにかく、お前のそばがいい。…んじゃ、おや…すみ…」
「ちょ…た、高杉?!」
 本気で寝てしまったらしく、揺すっても起きない。すーすーと寝息をたてている。
「ど、どうすればいいんだよ、これ…」
 自分の胸の中で寝てしまった高杉を抱きかかえたまま、久坂は大きくため息をついた。

第2話・了。 続く

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DARK HALF一気読み第2話 * Trackback(0) * Comment(0) * Page top↑




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